東京ガス社員が訪ねた

カーボンクレジットを⽣み出す環境保全
プロジェクトの現場

カーボンニュートラルLNGに活⽤されているカーボンクレジットは、世界各地
で⾏われている環境保全プロジェクトから創出されている。
そのプロジェクトの⼀つである、カティンガン・メンタヤプロジェクトを東京
ガス社員が訪ね、現地での取り組みに触れてきた。

プロジェクトの管理・運営を⾏う PT Rimba Makmur Utamaの⽅々との交流

カーボンニュートラルLNGと環境保全の関係

カーボンニュートラルLNG(CNL)とは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO2クレジットで相殺すること(カーボン・オフセット)により、地球規模では、この天然ガスを使用してもCO2が発生しない(カーボンニュートラル)とみなされるLNGだ。

世界各地で進むさまざまな環境保全プロジェクトは、CO₂排出の削減・抑制に貢献することに加え、⽣物多様性保全や新興国における⼈権の尊重など、SDGsの達成にも⼤きな役割を果たしている。

カティンガン・メンタヤプロジェクトとは

今回の訪問先であるカティンガン・メンタヤプロジェクトは、インドネシアの中央カリマンタンで行われている、泥炭地・森林保全プロジェクト。2010年にスタートした世界最大級のカーボンクレジット創出プロジェクト であり、約15万ヘクタールの泥炭地および森林の保全によって、年間平均約750万トンのCO₂削減に貢献している。ボルネオオランウータン、ミナミテナガザル等、絶滅危惧種の生息地保護にも貢献していることに加え、雇用創出等を通じて地域コミュニティへ持続可能な収入源を提供することで、貧困問題にも取り組んでいる。

プロジェクト周辺35の地元コミュニティとの協働によって、持続可能な形での環境保全を推し進めることを大切にしているプロジェクトであり、数ある保全プロジェクトの中でも高い評価を受けているプロジェクトの1つである。

< 泥炭地・森林破壊が進むインドネシア >

インドネシアには世界有数の泥炭湿地林がある。
泥炭地は⼤量の炭素を固定する重要な役割を果たしているが、近年は泥炭地の開発や泥炭⽕災により、膨⼤な量の⼆酸化炭素が排出されている。また、インドネシアは世界第三位の熱帯⾬林⾯積を保有しているが、近年は森林⽕災や、プランテーションの拡⼤、⽊材の海外輸出を⽬的にした違法伐採による森林破壊と、それに伴う⽣物多様性の喪失が⼤きな問題となっている。

(左) プロジェクトエリア内の森林 (右)実際の泥炭の様⼦

カティンガン・メンタヤプロジェクトの取り組み

地域コミュニティとの協働で持続可能な保全を実現

プロジェクト周辺の地域コミュニティへの⽀援、コミュニティとの協働によって、持続可能な形で環境保全を進めていくことは、プロジェクトが最も⼤切にしている理念の⼀つだ。
プランテーション開発や、地域住⺠による違法伐採、焼畑農業等も森林破壊の⼤きな要因である。そのため、違法伐採をしなくても地域住⺠が⾃⽴した⽣活を送れるように地域コミュニティを⽀えることは、⻑期的な森林保全にとって不可⽋な取り組みだ。

カティンガン・メンタヤプロジェクトは、プロジェクト運営に必要な職員の8割を地元のコミュニティから採⽤し、地域に雇⽤を⽣み出している。また、マイクロファイナンスでの融資による⼩規模ビジネスの⽴ち上げ⽀援や、学校教育への⽀援等、さまざまな取り組みを⾏い、地元コミュニティの経済的⾃⽴を促している。

付加価値商品の製造・販売⽀援(コミュニティの特産であるバナナを使ったバナナチップスの製造・販売の様⼦)
学校教育⽀援(有機農業や、農産物を加⼯した商品販売等の授業を実施)

森と生き物を育み、⽕災から守る

泥炭湿地林を適切な状態に保つために、泥炭の再潤化等の整備・保全作業を行うことも欠かせない。炭素吸収量の増加に貢献する苗木の育成と植林や、森林や泥炭地の日常的なモニタリングも重要だ。

また、森林破壊が進む⼤きな要因の⼀つは、森林⽕災である。焼畑農業等を⽬的とした⼈為的な⽕災や、乾季に発⽣する⾃然⽕災から泥炭湿地林を守らなければならない。地域コミュニティと連携した消防団を結成し、⽕災の発⽣を初期段階で発⾒する監視体制を整えるとともに、迅速に消⽕するための訓練も⽇々⾏っている。

(左) 植林体験の様子 (右) 苗木の育成と植林
(左) 泥炭火災時に使う消火道 (右) 消化訓練の様子

プロジェクトの現場で感じたカーボンニュートラルLNGの貢献性

森⾼雪菜⽒

(話し⼿肩書)
東京ガス株式会社
法⼈営業本部ソリューション共創部
VPP・グリーンソリューショングループ

森⾼雪菜⽒

今回の訪問時にカティンガン・メンタヤプロジェクトの⽅々の⽅から伺った、「コミュニティの⼈々が⾃然と“森を守る存在”になることができるような取り組みを⼤切にしている。彼らの⽣活を強制的に変えるのではなく、今必要な⽀援を⾒極め、持続可能な⽣計⼿段とより良い⽣活を⼈々に提供すること、そして、オーナーシップを持ってもらうことを常に⼼掛けている」という⾔葉が⼤変⼼に残っています。

実際に、プロジェクトの⼀環であるマイクロファイナンスを活⽤して、売店を経営する⼥性が「将来的には、再びマイクロファイナンスを利⽤してウエディングケーキ屋を⽴ち上げたい」と夢を語る様⼦や、プロジェクト前には違法伐採をして⽣計を⽴てていた⽅が、プロジェクトで仕事を得て、森林保全に従事している現在について「今とても幸せです」と話すのを聞き、環境保全とコミュニティの⼈々との共⽣の⼤切さや繋がりやプロジェクトの意義について、改めて理解することができました。

マイクロファイナンスを利⽤した⼥性と、⼥性が⽴ち上げた売店

環境保全プロジェクトは、数⼗年から百年といった⻑い期間に渡る維持・管理が必要で、絶えず変化していくものです。森林管理や植林など、直接的に森林を育み守ることと、地域コミュニティとの間に信頼関係を築いて共⽣を進めることは、どちらも保全プロジェクトの両輪として不可⽋であることを強く感じました。

今、2050年カーボンニュートラルに向けてさまざまな企業や人々が、日々気候変動問題に向き合い、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入等に取り組んでいます。カーボンニュートラルLNGは、将来のカーボンニュートラル目標を見据え、足元で脱炭素化が難しい熱分野で取り得る脱炭素化オプションの一つです。
カーボンニュートラルLNGについては、海を越えた先で広がる環境保全プロジェクトの取り組みや、その意義、現地で困難を乗り越えながらプロジェクトに関わる人々へ理解がとても大切であると感じています。

海を越えた先の森林や人々に想いを馳せるという、距離的にも離れていることに向き合うからこそ、プロジェクトの理解や対話を大切にしなければいけません。カーボンニュートラルLNGの役割や意義を多くの人にご理解いただき、ご採用いただけるよう、私自身が世界中で実施されている環境プロジェクトとお客さまの架け橋となりたいと思っています。

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